日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年11月26、27日) : 発音「退化」の先に在る日本語とは?

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バルセロナから(2018年11月26、27日) : 発音「退化」の先に在る日本語とは?


《なぞなぞ君》: IPA(国際音声記号) で見ると日本語の「フ」[ ɸɯ ]̹の子音は〔ɸ〕(両唇音)

で、音が発生する箇所から言うと、〔ɸ〕に一番近い位置は〔f〕(唇歯)で、〔h〕(声門)が一番遠い。


3つとも摩擦音だけど、日本語の「フ」をローマ字で表すとすると、その子音は、やはり「F」で標記したほうが発音が近いことを示せるわけだ。


外国人のための日本語教育の教科書ではヘボン式ローマ字が使われていて、五十音図の「フ」は「Fu」となっているんだ。


これは訓令式ローマ字の「フ」表記である「Hu」よりも音は

日本語の「フ」[ ɸɯ ]̹ の子音


〔ɸ〕(両唇音: ロウソクの火を吹き消すときのように唇を丸めて上唇と下唇が触れるか触れないかの形で出す摩擦音)


の音に近いけれど、近いだけに英語発音の


〔f〕音(唇歯音: 上前歯が下唇に触れたまま息を出すときに発生する摩擦音)


と間違えやすいんだ。


《ふしぎ君》:現代日本語のハ行がじつはパ行・ファ行から来ていると知れば、なるほど、「フ」の子音の発音がIPA(国際音声記号)では〔h〕でも〔f〕でもないけれど、ヘボン式ローマ字では「F」で現している理由が、よく分かるね。


《なぞなぞ君》:こんなわけで、現代日本語の「ハ行」の子音は、じつは遠い上古の時代には「パ行」[p] 音であった可能性が高く、それが奈良時代には「ファ行」[ ɸ ]̹音になったと言われていることが分かったと思う。


これが最初に紹介した室町時代の謎々「母には二たびあひたれど 父には一度もあはず」の背景なんだ。


ところで、日本語の「ハ行」変遷の歴史に見られるような「p→f→h」と発音が変化することを「唇音退化の法則」と言うんだけど、日本語がだんだん発音しやすいように変わってきていることは、「ハ行」だけでなく、何か実感できるものがあるね。


《ふしぎ君》:それはあるね。例えば、最近気づいたんだけど、「すごい」という言葉も現代日本人は活用させないで使っているね。「すごい嬉しい」とか。


《なぞなぞ君》:そうだね。「すごい」は世代を問わず、活用のある形容詞として使わなくなってきているね。みんな副詞になってしまっているよ。


《ふしぎ君》:「すごい人が多い」なんて平気で言ってる。「すごい人」が多い? 「人がすごく多い」と言っているつもりで、何でもかんでも「すごい」で済ませている。これはもう「唇音退化」どころじゃないね。


「すごい」を「すごく」と活用させることさえも面倒臭くなってきているのかな。そのうち、唇も舌も歯も、しまいには声門さえも使わなくなってしまうんじゃないか。


《なぞなぞ君》:「すごい」なんかに代表される活用語の「不活用」化や、「ハ行」に見られる日本語に対する日本人の発音上の「退化」が進めば、その先にどんな日本語が待っているんだろうか。未来の日本語を覗いてみたい気もするね。

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写真は、バルセロナのカフェ「4匹の猫」( Els Quatre Gats) のメニューに描かれたピカソ作品と。

若き日のピカソ(Pablo Picasso)が通ったという、このカフェには私も胸を躍らせて入ったものだ。

そのメニューのためにピカソが描いた絵が、旧市街の小径の壁絵になっていたので、私もグラスに手を伸ばしてみた。

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