日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年10月8、9日) : あなたは【を】をどう発音しているか

#スペイン #バルセロナ #日本語 #助詞「を」 #龍(dragón)


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バルセロナから(2018年10月8、9日) : あなたは【を】をどう発音しているか


俳句の査定をする日本のテレビ番組「プレバト」を見るのが楽しみである。ゲストの俳句の査定をする先生による説明や添削も感心することが多い。


私の仕事である日本語や国語の教師もまた学生たちの日本語文や作文を添削することが重要な仕事だからだ。


この番組のある日の放送で、ゲストの次の句が紹介された。


「ミシュランの 星の瀑布に 渡り鳥」

(星の数で格付けをするミシュランガイドを手にした外国人が有名

な滝を見に大勢やって来た。そして、その滝に渡り鳥が飛んで来た)という句である。


この番組の俳句の先生は、「瀑布【に】」を「瀑布【を】」に直した。


たしかに、「瀑布【に】」とすると、渡り鳥の飛ぶイメージは「瀑布」のところで止まっている。言わば静止画になってしまう。格助詞【に】は行為の到達点を示し、その結果だけを知らせるからだ。


そこで、「瀑布【を】」とすれば、渡り鳥はいま目の前で滝の上空を通り過ぎようとしている、

という躍動感が広がり、動画的なイメージになる効果がある。


格助詞【を】は、この場合、単に目的対象を指し示すのではなく、

移動・通過を動的に表す働きがあるからだ。


助詞一つで、句全体のイメージがすっかり変わってしまうのが俳句、延いては、日本語の魅力でもあり繊細さでもある。そのことを再認識するには格好の例だった。


ところで、この俳句の先生が【を】を何度も「ウォ」と発音するのには、また別の思いを

私に抱かせた。


【を】を「お」(o)と区別して「ウォ(wo)」と発音したのでは、奈良時代に戻ってしまうの

か?と突っ込みたくなったからだ。


ちなみに、「を」の発音は次のように変遷したとされる。

奈良時代:【お】は /o/、【を】は /wo/ →

平安時代:両方とも/wo/ →

江戸時代から現在(共通語)まで:両方とも/o/になっている。


この問題をネットで視聴者意見として同番組に問い合わせてみたが、いまだに返事は来ていない。


じつは、なかなか面白い問題である。

次回もこの【を】の発音について考えてみたい。


写真は、バルセロナの遊歩道「ランブラス通り」(La Rambla)にある日本趣味の装飾が施された銀行の建物にその勇姿を誇る龍(dragón)像。壁には着物姿の男女の日本人らしき絵もある。

しかし、どうも中国のイメージも混在している東洋趣味のようだ。

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