バルセロナから(2018年10月4、5日) : 「彼女【を】好きな」は禁じ手か
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バルセロナから(2018年10月4、5日) : 「彼女【を】好きな」は禁じ手か
「彼【が】彼女【が】好きなの【が】問題だ」
この文のガ格を一般の日本語話者の感覚を想定し、それに応える形で、まず概括的に分析してみると以下のようになる。
① 二つ目の【が】は【を】ではないのか? すなわち、「彼が彼女【を】好きなのが問
題だ」という文にしてみる。
なるほど一見すっきりした文に見える。だが、「好きな」は形容動詞(日本語教育では「ナ形容詞」)であって動詞ではないのだから、少なくとも文法的整合性から言うと、「【を】好きな」とはならない。
「【を】好きだと《思う》」ならば文法的に成り立つ。
②三つ目の【が】は【は】では駄目なのか? すなわち、「彼が彼女が好きなの【は】問題だ」という文になる。
この文だけを見るのならばこれで良いのだが、「何【が】問題なのか?」の返答としては成っていない。
三つ目の【が】を【を】に換えれば、先輩社員が敢えて【が】を用いて応えた意図が無になる。
③一つ目の【が】を【の】に換えられないのか? すなわち「彼【の】彼女が好きなのが問題だ」となる。
たとえば「彼【の】賭け事が好きなのが問題だ」ならば誤解はないが、「彼【の】彼女が好きなのが問題だ」では、「《彼の彼女》が好きな」とも解釈できて誤解を生むので、この場合の【の】は使えない。
④一つ目の【が】を【は】にできないか?
すなわち、「彼【は】彼女が好きなのが問題だ」としてみる。
ここで「彼【は】」は「彼《については》」の意味になる。
つまり、「彼」以外の人物、たとえば「彼女」については別の問題もあろうが《とにかく彼について言えば》こういう問題がある、という含みが込められている。
したがって、これでは《今回の件については》という若い社員の質問に応えたことにはならなくなる。ここは情況から考えて、やはり【が】にならざるを得ない。
⑤二つ目の【が】は【は】に置き換えられないか? すなわち、「彼が彼女【は】好きなのが問題だ」となる。
この場合は《他の人については好きではない》が、《彼女については好き》だという含みが生じ、別の情況を暗示してしまう。やはりここも【が】がふさわしい。
以上、助詞の変換において5つのケースを検証してみたが、今ひとつ腑に落ちない。
では、この文題のままでいいのか?
次回はその解決策を考えてみたい。
写真は、バルセロナの通称チョコレート通り(la Calle del Chocolate) にて。
旧市街にある小粋な商店通りでuna tontería(馬鹿げたこと)をやってみた。