日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年2月19日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(24)やっぱりお前だったか

バルセロナから(2018年2月19日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(24)やっぱりお前だったか


「もう来ているよ。ホセ」

携帯を通した佐分利の声が、まるですぐ傍(そば)から聞こえてくる響きで、ホセは思わず周りを見渡した。すると聖堂内部への入り口である「希望の扉」が開いていて、そこにサムライが携帯を手に仁王立ちしていた。探偵事務所に出入りするジョルディも一緒だった。  二人はすぐに駆け寄って来て、まだショックでしゃがみこんで茫然としている加納を見つめた。

「大丈夫ですか。加納さん」佐分利は加納の顔を覗き込むようにして言った。加納はまだこわばった顔のまま、佐分利に右手を少し上げて人差し指と親指で丸をつくって見せ、小さく頷(うなず)いた。 「ジョルディの知らせを受けて急いで駆け込んできたが、間に合わなかった。幸い加納さんは無事だったけど…」ここまで話して、佐分利は急に口を閉じた。そして目を針のように細め、黙って唇に人差し指を当てた。一瞬、四人の息遣いまでも消えた。佐分利は顔を能面のようにしたまま動かさず、右手の親指を立て、天井を指した。


聖堂内は作業場として使われていて、天井近くには幾つか足場が組まれている。四人は無言のまま、息を潜めて耳と目を研ぎ澄ませた。すると佐分利がちらっと足場付近に目を遣り、顔を動かさず野太い声を聖堂内に響かせた。それは決して声高ではないが、鳥肌の立つような威圧感があった。

「ペドロ。ペドロ・フェルナンデス・ナカモト。やっぱりお前だったか」

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