日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年2月18日) :「サグラダ・ファミリア異聞」 (23)鉄骨落下

バルセロナから(2018年2月18日) :「サグラダ・ファミリア異聞」

(23)鉄骨落下  


上方で何かが外れたようなその鈍い音に、加納は反射的に身構えた。間髪を置かず、その嫌な音がガランとした高い天井に響くのとほとんど同時に、

「クイダード(危ない)!」と聖堂内部に、とてつもない大声が響き渡った。


加納は思わず両手で頭を覆い、転がるように壁側に身を寄せた。次の瞬間、2メートルはあるかと思われる鉄骨が凄まじい音を立てて加納の足元に跳ね落ちた。ホセが必死の形相で加納に駆け寄ってきた。


このガタイの良いスペイン人は、佐分利が密かに加納の護衛に付けていた男だ。

「大丈夫ですか?」ホセは悲痛な表情で加納を抱き起して叫んだ。 「大丈夫だ。ありがとう…」と加納は、足元に転がっている、今しがた自分を潰すところだった鉄骨をまじまじと見た。こんなものがまともに当たったら即死だったろう。そして、幾つもの足場が組み上げられた天井を見上げた。


…危ないところだった。しばらく鉄骨が落下してきた辺りを見上げていた加納は、思い出したように頬を膨らませてゆっくりと息を吐いた。  

この日のホセは他の石工や作業員が帰ってからも、密かに加納の身辺に目配りしていた。ちょうど生誕の門の希望の扉から聖堂内部に入って、加納の様子を窺っていたところに、あのガタンという天井に響く音を聞いたのだ。


加納がどこも痛めていないことを確かめてから、ホセは内ポケットから携帯を取り出し、佐分利に電話した。

「サムライ、加納さんが殺されそうになった」

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