日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年2月16日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(21)狂気と悪魔の握手

バルセロナから(2018年2月16日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(21)狂気と悪魔の握手


その刀身は八十センチほどある見事な太刀で、刀剣について素人の私が見てもその刃先の深い輝きや反り具合も絶妙のように思える。佐分利はさらに柄を外して茎(なかご)を見せた。そこには、出羽国住人大慶庄司直胤と銘が刻まれ、その下にシンプルな花押があった。さらに裏を見ると、文化十四年仲春とある。


サムライは幾分得意げに、

「江戸後期の名工の作品で、今だと三百万円は下らないだろうね。たしかに、こんなものを夜中に眺めていたら邪悪な何かが理性を葬ってしまいそうになるかも…」

佐分利はニヤリと私を見ると、茎(なかご)を柄に仕舞い、改めて抜き身の刀身を窓から差してくる木漏れ日にかざして言った。


「これはあの名刀、備前長船(おさふね)長光に倣ったものらしい。よく詰んだ小板目鍛えに、地の部分が薄らと雲か霞がかかったように見える。つまり名刀によく言われる特徴、地沸(じにえ)微塵に厚くつき乱れ映りが鮮やかに立つ、というわけだ。ま、良い刀だと思う」


刀剣にも博識ぶりを垣間見せて私を煙に巻いたかと思うと、真顔に戻り、日本刀を袋に仕舞いながら話を続けた。

「バルセロナ市に登録されている美術骨董品のリストを手に入れたんだが、私の他に三人が日本刀所持を申告している。これもすでにジェラード警部を通してルミノール反応を調べてもらったんだけど、いずれもシロだった。血を吸った刀ではなかった。そうなると考えられるのは、マフィアかその道のプロだ。頭部をあんなふうな切り口で胴体と切り離せるのは、相当な日本刀の使い手が躊躇せずに、ひと太刀で振り抜いた場合だけだ。憎悪に満ちた狂気が冷酷な悪魔の心と握手しなければできない仕業だよ」

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