日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年2月15日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(20)《くのいち》と忍術道場

バルセロナから(2018年2月15日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(20)《くのいち》と忍術道場


「ま、そういうわけで、君も身辺には注意したほうがいい」佐分利は顎を撫でながら私を上目づかいで見据えて言った。


「ところで、ゴシック地区にある忍術道場ね。あそこにマリアを通わせているんだ。彼女は父親の道場で小さい時から忍術を知っているから、すんなりと入り込めたよ。本気でやれば、あそこの道場では誰もかなわないだろうね。瞠目すべき《くのいち》、女忍者だよ」


「彼女の役割ってのは、それだったのか」いつものことだが、私は佐分利の行動の素早さに舌を巻いた。


「まあね。彼女は、あれでなかなか演技派だよ。すっかり道場の内部に溶け込んで、いろいろ情報を仕入れてくれている。日本刀の真剣の使い手とかね」そう言うと彼は、奥の小部屋に入り、すぐに、年季の入った紫色の細長い袋を持ち出して来た。それをデスクの上に乗せると、袋の中から大事そうに抜き出したものは、日本刀の真剣だった。


「親父から受け継いだ名刀だよ。ここでは美術品として届けてあるけれど、ときどきこれで素振りをやってるんだ」

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