日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年2月14日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(19)人違い襲撃

バルセロナから(2018年2月14日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(19)人違い襲撃



 「俺と?」


 私は佐分利の顔をまじまじと見た。


 「そうさ、な」


いつもの口調で言うと、彼は思わせ振りにニヤリとして言葉を続けた。



 「お前の学生時代の悪友、サグラダの主任石工の加納公彦さんね。彼がアンヘラさんと彼女に反発する“ガウディを伝える会”の長老たちとの仲を取り持とうとしていたことが、逆に変なふうに取られて、長老たちから白い眼で見られるようになった。


それどころか、加納さんの身辺に何やら不穏な動きが何度かあったらしい。これは晒し首事件後、私が密かに加納さんの警護に付けたホセからの報告なんだけどね」



 佐分利は短くなった煙草を灰皿に押し込めると、アームチェアーに寄り掛かって天井を向くようにして話を続けた。



 「つまり、手っ取り早く言うと、黒装束の男は、その加納さんと親しいお前を襲うつもりで、ひと間違えで俺を襲った、というわけさ。加納さんの友人であるお前が例の晒し首事件の犯人捜しをしている、との情報を受けて黒装束がお前を抹殺しようとしているらしい。


これもホセからの連絡で分かったことだ。お前のお蔭で、俺は二度も命を落とすところだったんだからね」



こう言って私を再びギョロリと睨んで見せた佐分利は、今度は下を向いて、いかにも愉快そうにカッカと笑った。

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