日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年2月12日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(17)沈黙と饒舌

バルセロナから(2018年2月12日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(17)沈黙と饒舌 


  左手でバランスを取りながら右手の竹刀を振りかぶって跳び掛かったサムライは、跳んだ瞬間に舌打ちをした。果たして、彼は虚しく落ち葉溜りの上に着地した。木の下に蹲(うずくま)っていたはずの黒装束の男は、すでにサムライの背後の暗闇に消えていた。



 翌朝、探偵事務所を訪れた私に、昨夜の雑木林での出来事を、佐分利は渋い顔をして話してくれた。ポーカーフェイスの彼には珍しく、その表情には悔しさがありありと見て取れた。無理もない、自分の勝手知った雑木林で二度も捕り逃してしまったのだから。しかも、どうやら二度とも同じ人物らしい。



アームチェアーに沈むように座り、エスプレッソの小さなカップを左の掌に乗せて、右手の人差し指でカップの柄を押さえたまま、佐分利は急に目を針のように細くして黙った。こういう時の彼は、集中力が極限まで高められている。やがて、ゆっくり目を開き、その濃いコーヒーを飲み干すと、おもむろにこう言った。


 「なるほど…」


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