日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年2月9日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(14)月明かりの対決

バルセロナから(2018年2月9日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(14)月明かりの対決


                                                          
  佐分利は剣道の練習着のまま、とっさに竹刀(しない)を握り、黒装束の男を追った。彼の早朝のトレーニングの場である雑木林に、その男が逃げ込んだからである。あそこなら月明かりで充分動ける。勝手知った自分の雑木林だ。



 暗闇を走りながら、ニ週間ほど前に自分を攻撃してきた黒装束の男を思い出していた。同一人物か、そうでなくともその一味に違いない。今さっき彼をかすめたものが手裏剣だとすぐに思ったのは、あの時、あの黒装束の男をみすみす逃してしまったことが彼の中で引っ掛かっていた証拠だ。



雑木林に入ると、すでに佐分利は懐の礫(つぶて)を右手で握っていた。竹刀は左手一本でも自在に操れる。雑木林は月明かりと事務所の明かりが漏れていて、身体能力に恵まれた彼が動くのに問題はなかった。



だが、これは黒装束の男にとっても同じことが言える。佐分利は息を止め、枯葉を踏まぬように木の根元から根元へと足を忍ばせながら、木々の上に目を遣った。前回襲撃された際、黒装束の男が枝になっていたのを覚えていたのだ。あの男が息を潜めても、並外れた直観力を持つ佐分利には、気配はすぐに分かる……



サムライは右手の礫を、その朽ちかけた"枝"の真ん中に音も立てずに放った。


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