日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年2月8日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(13)殺気

バルセロナから(2018年2月8日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(13)殺気



 佐分利が黒装束の男に襲撃された件を私に苦笑いを交えて話してくれてから二週間後、また襲われるとは彼も思ってもいなかったようだ。           


                                                          


  一方、スペインいやヨーロッパ中を戦慄させたサグラダ・ファミリアの晒し首事件は、ジェラード警部率いる警察側の懸命の捜査にも関わらず、目立った解明の進展のないまま、ひと月近くが過ぎようとしていた。そして、まさにその夜、佐分利の身辺に再びただならぬ出来事が起こった。



佐分利は住居兼探偵事務所の向いに剣道道場を開いているのだが、夜も十時を過ぎ、彼がいつものように道場の戸締りを確認して、事務所に戻ろうとした時のことであった。



 背後からもの凄い"殺気"を感じ、とっさに地面に伏せた。閉めた道場のドアに鈍い音がして何かが突き刺さった。地面に伏せたまま顔を横ざまに僅かに上げた彼の目に映ったのは、あの手裏剣だった。


 月明かりに黒びかりした十字状の刃物が、つい二週間前に自分を襲った、あの手裏剣だとすぐ分かった。



 彼は地面に這ったまま素早く身構え、左脇と地面の隙間から後ろを覗くと、黒い影が事務所の前を走り抜けて事務所裏の雑木林へ通じる小道へ消えて行くのが見えた。

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