日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年2月5日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(10)悪戯っぽい微笑み

バルセロナから(2018年2月5日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(10)悪戯っぽい微笑み


「だから、ひょっとすると」私はすかさず口を挟んだ。


 「加納が俺を通じてお前に捜査を依頼したのも、あいつ自身の身に危険を感じたからに違いない」


 「そうさ、な」佐分利は、こんなときいつも言う口癖を、何か思いつめたように吐き出して、私の顔をじっと見つめたまま一気に言った。



「まず、加納さんの警護にホセをつけた。彼ならガタイもでかいし押しもきく。日本語も大丈夫だしね。次に、サグラダ・ファミリアの工事現場に3か所隠しカメラをつけるようにジェラード警部を通じて頼んでおいた。それから、もう、ある人物に目をつけていてジョルディにその身辺を探らせている」彼には珍しく、これから起こるかもしれないことに不安を隠さなかった。



 「あら、さすがサムライね。初動が早い」いつの間にか、事務所に入ってきていたのは、私と同様、佐分利に協力しているマリアだ。彼女は


「ドアが開いていたわよ。不用心ね。私のように外見は金髪、青い目でも日本語の分かるスペイン人がいるってこと忘れちゃだめよ」と悪戯っぽく微笑んだ。



 「むさ苦しい男ばかりじゃ、事件もこじれる、ってこと。私にいい考えがあるの」


 私と佐分利は顔を見合わせた。

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