日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年2月3日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(8)確執

バルセロナから(2018年2月3日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(8)確執


「で、その五十五年前の石工の死と今回の事件は何か関係がありそうなのか?」私はサムライに水を向けてみた。佐分利と私は事件現場から早々に引き揚げて、彼の探偵事務所にいる。もう午前八時を回っていた。自分で作った朝食……蜂蜜をたっぷり入れた特製のミルクセーキを一息で飲んでから深い溜め息をついて、彼は渋い顔をしてようやく答えた。



「今のところ確証はないが、俺の頭の中では太い線で結ばれているよ」


「生首の彼女はジェラード警部によると」と私はメモ帳を開きながら、さらに水を向けようとすると、この探偵は、


 「アンヘラ・マルティネス、二十八歳。カタルーニャ芸術大学を卒業後すぐにサグラダ・ファミリア財団の秘書になり、その真面目な勤務ぶりを買われてこの秋から”ガウディの意志を継ぐ会”の役員に抜擢された」とテーブルに置いてある黒手帳を捲りながら、さらに一気に、抑揚のない歌でも歌うように続けた。



「だが、その真面目さがアダにもなった。彼女はガウディの意志を新しい解釈で引き継ごうとするグループ”ガウディ未来の会”の一員でもあった。サグラダ・ファミリア教会の完成プランに彼女の芸術観を半ば強引に挟み込んで、ガウディの作風を忠実に後世に伝えようとするグループ”ガウディを伝える会”のメンバーたちには強い反感と警戒心を植え付けてしまった。 意図しない確執が生まれていた。



そこでだ」サムライは窓際にゆっくり歩きながら、


 「君の言う五十五年前の石工の死との関係だが……」

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