日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年1月30日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(4) 侍

バルセロナから(2018年1月30日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(4) 侍



  ジェラード警部は、尖塔に晒された生首をじっと見つめたあと、顔を顰(しか)めながら


「人間のすることか……」と呟いた。彼は「モソ」と呼ばれるカタルーニャ州の自治州警察でも古株の名物警部である。



巨漢を斜め後ろに捩じり、鬼才画家ダリそっくりの髭を撫でながら、


 「ところで、サムライ、君はなんでこんなに早くこの事件を嗅ぎ付けたんだね?」と佐分利に話しかけた。佐分利は、寝起きに慌ててやって来たものだから、ひどい寝癖の髪を押さえ付けながら、


 「今回はこいつのお蔭で」と横にいる私に目を遣った。



  私は佐分利と一緒にバルセロナの大学院で日本学を研究していたが、彼は江戸犯罪、私は日本古代建築とそれぞれの興味にのめり込んで行くうちに、佐分利は探偵事務所を起ち上げ、私は建築家を生業とするようになった。



この陰惨な事件が起こったサグラダ・ファミリアで主任石工をやっている日本人、加納公彦は日本の大学時代の悪友である。



 今回は、加納が第一発見者ということで、警察への連絡と同時に私を電話で叩き起こしてくれた、というわけである。私が佐分利の探偵事務所に関わっていることをすぐに思い出してくれたようだ。

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