日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年1月29日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(3)戦慄

バルセロナから(2018年1月29日) : 「サグラダ・ファミリア異聞」(3)戦慄



 少年は明け方の光がゆっくりとバルセロナの街を照らし出す光景が好きだった。このヨーロッパ有数の大都市の喧騒が夜の帳(とばり)を降ろして深い眠りに入り、やがて暁光が差し込み、また快活な一日の始まりを告げようとする早朝のこの時間が、一番好きな瞬間であった。



  が、今しがた少年が双眼鏡の中で見た光景は、ようやく微睡(まどろ)みから目覚めようとするこの美しい街に、バルセロナの歴史上かつて無かった戦慄と恐怖を与えた。



 少年が街もまだ微睡む曙の静寂を切り裂くような叫び声をあげたその先には、サグラダ・ファミリアの尖塔があり、その先端部分に、どす黒い、歪(いびつ)なボール状のものがぶら下がっていた。注意深く目を凝らして見ると、それは、紛れもなく人の生首だった。



  髪を頭の上のほうに束ねて、それにロープを結わえ、尖塔の先端部分に引っ掛けられていた。風に揺られ左右に揺れながら、その首は何かに耐えながら微かに笑っていたように見えた。喉の半分ぐらいから切り取られ、夥(おびただ)しい赤黒い血を垂れ流していた。

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