日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年1月15日) : 1990年「南米ひとり旅」ペルー、インカ遺跡マチュピチュの麓の温泉村から

バルセロナから(2018年1月15日) : 1990年「南米ひとり旅」ペルー、インカ遺跡マチュピチュの麓の温泉村から


クスコから鈍行の汽車で五時間ちょっとの所に、アグアス・カリエンテス(熱い水)という小さな村がある。その名の通り、日本人が泣いて喜ぶ熱い温泉がある。地元の人は皆ぬるいほうの温泉に入るので、私は露天の熱い湯を独り占めにして旅の疲れを癒した。


ここから線路沿いに少し歩くと、世界遺産マチュピチュのインカ遺跡のある山に着く。初日はあいにくの雨で、遺跡の入り口まで来て諦めなければならなかった。土砂降りになり、山肌が危険な状態だったのだ。


 宿に戻り、小降りになってから、又あの熱い温泉に入りに行った。宿から温泉場までは、つづら折りの上り坂をしばらく歩かなければならない。わざわざ雨の中を露天の温泉に入りに来るのは私ぐらいなもので、湯場の管理人も首を傾げていた。雨の中の温泉もこたえられない。


執念とは恐ろしいもので、海外にいて、そこに温泉があると聞くと、私はとにかく行ってみることにしている。東ヨーロッパでは、ハンガリーのブダペストで偶然見つけた温泉が素晴らしかった。銭湯のような感じで、温度別に幾つもの広い湯舟に分かれていて、ふんどしを兼ねるタオルを貸してくれる。こんないい温泉には入ると、それだけでその国が好きになってしまう。が、期待外れもないわけではない。


たしかメキシコだったと思うが、温泉があると聞いて、いそいそと行ってみると、そこはまるで強制収容所の風呂場のようだった。暗いコンクリート壁の個室に通され、苔まで生えているその湯場には冷たい水がよどんでいるだけだった。冷泉だったのである。


さて、アグアス・カリエンテスの宿でもう一泊し、翌朝早くマチュピチュヘ行った。雨はすっかり上がっていた。山の上に着いたとき、霧の中から不意に現れる、いにしえのインカの遺跡を目の当たりにして、人は息をのまざるを得ない。私は時間を忘れて、飽くことなく遺跡の中を見て歩いた。

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