日本語教育・日本語そして日本についても考えてみたい(その2)

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バルセロナから(2018年11月10、11日) : 「時計」は本当に「トケー (tokē)」なのか?その混迷ぶりを観る

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バルセロナから(2018年11月10、11日) : 「時計」は本当に「トケー (tokē)」なのか?その混迷ぶりを観る


「時計」「映画」は「トケイ」「エイガ」のように「e+イ」と発音するのか、それとも「トケー」「エーガ」のように「eの長音」として発音するのか。


「エ列+い」の表記と発音の問題は現在でも揺れていて、専門家の間でも解決の見通しを示せないのが現状のようだ。


元はと言えば、日本に「正書法」がないのが混乱の原因をつくっているのだが、「国語、つまり日本語には触らぬ神の祟りなし」の伝統がある日本では、これから先も、海外にある「言語アカデミー」のようなに日本語についてのしっかりした組織や規範が出来るとは考えにくい。


まず、第15期国語審議会、第4回総会「仮名遣い委員会の審議状況について」(報告)(1)を見てみると、「エ列+い」の発音について次のような報告が見える。


林主査 《次に,4の「えい,けい,せい,……」とエ列長音の問題であるが,「えい,けい,せい,……」の例としては「えいせい(衛生)」「けいえい(経営)」「せんせい(先生)」「きれい」「せい」など。「せい」は,背の高さと言うのと,あなたの所為だと言うときの「せい」である。


「せい(背)」は別であるが,主として字音語であって,これらは普通には「エーセー」「ケーエー」のように発音されることが多いわけである。しかし,これについては「現代かなづかい」では何にも規定をしていないので,「えいせい」「けいえい」と書くことになっている。》


《これを長音と認めると,「エ列長音は,エ列のかなにえをつけて書く」,という細則第十一との関係はどうなるか。「現代かなづかい」では,その細則の語例として,「ねえさん」,「ええ」という応答の言葉が例に挙がっているだけであって,「えいせい」や「けいえい」その他の主として字音語の「えい」「せい」についてはそこで触れていない。》


《次に,「現代かなづかい」では,字音は「エイ」「セイ」だと認めて,エ列長音とは見ていないのではないかという御意見。確かにエ列長音とは認めなかったということになるのではないかというふうに思われる。


そこで,例えば「きれい」は「キレイ」から「キレー」まで実際の発音としては無限の幅を認めてよいということが,「現代かなづかい」制定の当時に説明があった,というような御注意もあったわけである。


また,エ列長音を「エ列のかなに【い】(をつける)」とするのがよい。すなわち,「ええ」と書かないで「えい」と書く方を本則にしてしまう,その方がよい,こういう御意見もあった。


それから,現状のままで何の矛盾も感じない。字音語の場合は,実際の発音はともかく,頭の中には完全に「えい」「けい」のように「い」で収まっている。「ねえさん」と「せんせい」とでは意識が違う。つまり,「ねえさん」の「ねえ」というところと,「せんせい」の「せい」というところでは意識が違うと思う,こういう御意見があった。》


(以上、《 》は文化庁のサイトより抜粋)


「時計(とけい)」「映画(えいが)」「丁寧(ていねい)」のような「エ列+い」の発音の問題は国語審議会の中でも様々な意見が噴出し、問題の混迷ぶりが伺える。


専門家が頭を突き合わせても、いまだにその解決策を得ていないことが、この報告からも見て取れるのである。


次回は、この問題をもう少し掘り下げて考えてみたい。


写真は、私の日本語クラスの学生が折った折り紙「孔雀」(Pavo real)。日本文化を愛でる情熱が結晶となって、凛とした孔雀の姿に現れている。

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